永井"ホトケ"隆


「Trick Bag Tribe(TBT)」vol.9/1999.07.15


Live News☆もうすぐ7/16>>>TBは「目黒ブルーズアレイ」TEL:5496-4381 小島がひょっとすると一部から参加できるかも・・・コジ犬はハアハアと全速力で走ってくるそうです。ゲストはFusion界でいま一番人気の勝田一樹(sax)☆☆ 7/29「JIROKICHI」TEL:3339-2727は鶴谷が全宇宙エイリアン総会のため欠席。助っ人ドラマーはチャ−に「ゴロー ルイス アンド チャーやらへんか?」と持ちかけた通称「バラシの五郎」こと正木五郎。そして、8/8は「上野ジャズ・イン」 TBは4:50からの演奏。詳しくはUENO JAZZ INN 係 TEL:3872-9972またはテイクワン048-265-5000 そして、シークレットにしていた-その8/8の夜は「JIROKICHI」にてJack of the bluesことブラザー山岸潤史と久々のIT'S A CARNIVAL TIME!ヤツは上野にも来るだろう。ということで体力つけてCome on everybody,let's the good time roll!

♪V・A・C・A・T・I・O・N♪夏休み♪海辺やホテルのプールサイドでは足の長い、胸板の厚い、肌が褐色の、顔のホリの深い、若い男たちと足の長い、胸の大きな、肌がツヤツヤの、顔はしっかりお化粧した若い女たちが「ビバリーヒルズ高校白書」のワン・シーンのように夏を楽しんでいますが、肉体にあまり自信のない私は極力そういう所は避けています。昨年あまりの暑さに耐えきれず若者のいない近所の市民プールへ。入場料金200円(安い!)。そこには当然きゃーきゃーと走り回る子供、泣いている幼児、やたら飛び込む元気な中学生、日光浴ではなくただ寝不足で寝ている腹のたるんだ父親、スイートピーの花柄の水着がひまわりの花柄になってしまった母親、むきになって子供に泳ぎを教える父、孫を連れてきたタオルをかぶりジャージを着たばあさん、昔の水着に無理矢理肉を入れ込んだ一見グラマーな、でもデブな、塗り絵のようなケバイ化粧中年女(こいつがやたらキョロキョロしながらプールサイドを歩き回る。たぶん、自分をグラマーでセクシーだと思っている)・・・などがいました。プールに入り確かにすこしは涼しくなったが、美的には暑苦しい風景の市民プールに約2時間。しかし、よーく考えてみると髪の長い、胸板のうすい、顔色の悪い、何の職業かわからない男が平日に市民プールにいるのも変なのかも知れない。帰り売店で子供の頃から大好物のコーヒー牛乳を買っていると、さっきのデブ・グラ・ウーマンが来て「ダイエット・コーラ」といいましたが、ふつうのコーラしかなくそれを飲んでいました。僕は心の中で「ミネラル・ウォーターにしとけ・・」と呟きました。さて、一応前回でTrickBagのメンバーの紹介が終わったので、今回は以前ライヴの時に一度Trick Bag がカヴァーしている曲の解説をプリントして配布したところ好評だったので、TBTのみなさんにそれを更に充実させてお送りします。

TB SONGS FOR TB LOVERS Vol.1
1.Trick Bag (E.K.Johnson)
ニューオリンズの酔いどれブルーズマン、アール・キングの曲。アール・キングはジミ・ヘンドリックスがカヴァーした「COME ON」ジョニー・ギター・ワトソンの「THOSE LONELY LONELY NIGHT」などを書いた素晴らしいソング・ライターでもあるのですが、本人に会うと「ほんまにあんたが作ったんか?」と言いたくなるようなドロドロのHeavy Drunker。来日時、京都「磔々」のステージでホロ酔いの足がもつれて転んだミュージシャンはアール・キングだけでしょう。そんな人ですからミス・トーンもします。歌詞も忘れます。しかし、濃厚なブルーズの原液をステージからまき散らした私の最も尊敬するブルーズマンのひとりです。昨年、その長年の酒ほか諸々がたたって入院し生死の境を綱渡りしたアール・キングですが、今年の春に退院。退院後の復帰初ライヴには「アール・キングがクリーンになったって?ほんまかいな?」と、一般客よりも地元ニューオリンズのミュージシャンたちがいままで一度も見たことのない☆クリーン・キング☆を見るために多数集合したらしい(ヒマやなぁ・・)。今年の春のヘリテイジ・コンサ−トでは☆クリーン・キング☆は今までで一番いい演奏をしたと山岸潤史のニューオリンズ・レポートでした。この曲は♪夜中の3時に女房が「あんた、ちょっとドラッグ・ストアーへ行ってくるわ」とマツモト・キヨシ(?)ヘ・・。でもドラッグ・ストアは9時15分に閉まってるのオレは知ってる。嘘ついてるなぁ。と垣根のところを見たらウィリーとキスしてるやないか。その上オレのことを「イモやわ・・うちのダンナ。センス悪いやろ」とボヤいてるやないか。おまえがオレにすることはずっとこんなイケズばっかや。結局オレをドツボに落とすつもりやな♪まあ、こんな意味で、最後に女房が自分の父親に電話で泣きついて、その義理の父親に「あいつはオレの実の娘やけど、君はただの義理の息子やからなぁ」と冷たく言われてしまう。是非、ニューオリンズのアール・キングを訪ねてTrickBagのTrickBagを聞かせたいのですが、以前ボクがサインを求めた時に「えーっ、実は僕はあなたの曲が好きでカヴァーしてるんですが・・あなたのThose lonely lonely nightを」と言うと、彼は「そうか、おれの曲を好きなのか・・・うれしいね。」とは言わずにただこう言いました。「おまえ、おれに印税払ってるか?」こんな人柄が大好きです。

2.Nobody knows when you're down and out (J.Cox)
1920年代頃からある曲。「ブルーズの女王」と呼ばれビリ−・ホリディからジャニス・ジョップリンにまで影響を与えた偉大な女性ブルーズ・シンガー、ベッシー・スミスが1929年に録音したものが最も有名でしょう。若い人はEric Claptonの「Unplaged」で、変な人は「吾妻光良とSwinging Boppers」のヴァージョンで知ってるかも知れません。♪昔、大金持ちやった時は友達に高いシャンペンやワインをおごってやった。いくら金使ったって気にせえへんかった。でも、一旦落ちぶれ始めたら友達は去り、いまは行くところさえない有様や。みんなもよう覚えときや落ちぶれたときには誰も見向きもしてくれへんで♪と、世の東西、時代の推移を問わず共通する教訓的な歌。【バブル全盛期、社用のタクシー券を僕にくれ、北の新地のオネエチャンとホテルのスウィート・ルームで高価なワインを飲み、芦屋に家を買い、子供を私立に通わせクラシック・バレイを習わせ、ゴルフ焼けした腕を自慢気に見せ、グルメ気取りでウンチクを述べ、数人の飲み代はすべて自分のカードで奢っていた元証券会社X氏は、バブル崩壊後リストラされ知人を頼って運送会社の経理へ入れてもらった。かって課長だった彼にいまは肩書きはなく、会社の帰りに安酒場で焼酎を一杯だけのみ、僕のライヴに来る金にも困り、新地のオネエチャンにはもちろん別れを告げられ、ゴルフ焼けの腕は青白くなり、子供のバレイを辞めさせなければならないと涙ぐみ、最期に女房が家庭教師と密通していたことを嘆く頃には目は真っ赤になっていた。『そうか、家庭教師は子供だけやなくて、嫁はんにもいろいろ教えてたんや・・』と、笑いにもっていこうとした僕の意図は通じなかった。シラけ、こわばる彼に『おまえも新地のネエチャンだけやないやろ。いろいろおったやん・・まぁ、おあいこやな。♪オ、アイコ、アイコ、アイコ、アイコ♪』とヘラヘラ攻撃をかけて泣かしてやった。そして「落ちぶれたときには誰も相手にしてくれへんで」というこの歌の意味を話してやったら、彼はいたく感激してバブリ−な過去を思い出しチューハイをガブ飲みしていた】人生まさに山あり谷あり。しかし、ボーナスなし退職金なし肩書きなし貯えなし、有給休暇なし、もちろん生理休暇はないオレはいまだかって山の頂上を見たこともない、人生ずっ〜〜〜〜と谷、谷、谷・・・谷だぁ〜〜〜〜。でも、TBの音の中にいる時は山のてっぺんどころか天国です。

3.We've gotta get out of this place (Mann/Weil)
60年代のイギリスのグループ”The Animals”の65年のヒット曲。「陽も当たらない、こんなシケタところから出ていこう」「疲れて、白髪混じりの頭のおれの親父は奴隷のようにしやかりきに働いて人生が過ぎてしまった。オレとオマエにはもっといい生活ができるところがあるはず・・」いわゆる、音楽形式としてはブルーズ形式ではないが、歌詞はブルーズ。落胆と怒りの混じったブルーズ。この曲がヒットしたのは僕が中3の頃、当時イギリスからたくさんのロック・グループがデビューしたが、ローリング・ストーンズとこのアニマルズは見るからに不良という感じだった。でも、僕はそのヤバイ感じに惹かれていた。後にビデオでVoのエリック・バードンはどうしてAnimalsなんていうグループ名にしたのですか?というインタビュアーの問いににんまりとヤバイ笑みを浮かべこう言いました。「メンバーがみんなAnimal(野獣)なのさ」Oh yea! TrickBagにも笑う犬、酔った熊がいます。ハイ。

4.Little by Little (Landon/Wells)
シカゴ・ブルーズのVo&HarpのJunior Wellsの初期の曲。一晩中遊び回っている女にだんだん気持ちがさめていくというブルーズ。 Buddy Guyとコンビを組んで活躍していたことが多かったJunior。初来日の時、楽屋でBuddyと出番寸前までポーカーに夢中でバックバンドがJuniorの登場曲を始めてもまだカードを持ち、スタッフにセカされやっとステージへ。ここ数年Buddyの方が人気は上だったけどブルーズの深さは何倍も深かったし、ファンキーだったJuniorのBlues。残念なことに彼は昨年(1998/1/15 享年63才)天国へ召されてしまいました。映画「ブルーズ・ブラザーズ2」のスクリーンに彼が現われたときは正視できませんでした。天国でジョン・ベル−シとポーカーやってることでしょう。

5.Big Leg Woman
20年ほど前にこういう16ビートのブルーズをやると「なんであんな曲やるん?」とか「ブルースちゃうで」と言われたものでした。 時代の変遷に伴ってビートは移り変わっていくのに、しかもbluesとfunk は恋人同志のように相性がいいのに昔のビートばかりやれとおっしゃるブルーズ保存会のごとき方々とは決別してきました。♪めちゃホレてる女とのベタのおのろけブルーズ。原曲はFreddy Kingなのですが、ちょっと足が太いくらいのムチムチがFreddy King はお好みだったのか?

6.Pack It up(G.Chandler/Gonzales)
これもMr. そら豆face/Freddy King。「おまえと一緒におるともう頭グルグルになってまうわ。おまえのことを分ろうとしたけど、あかんもうギブ・アップや、荷物まとめるわ、おれらの生活も終わりや。ほなな」関西弁で書くとあきまへんが、ヘヴィな別れのブルーズ。この曲が入っているアルバム「1934-1976」は彼の最後の録音でした。ドラムにSteve Ferrone,パーカッションにMike Vernon、ギターにBobby Tenchなどを迎え新しいブルーズを作ろうとしていた矢先のFreddyの死でした。もちろんFunk満載のアルバムです。

7.South Bound (R.Betts)
7.8.9 の3曲はThe Allman Brothers Bandのcover です。70年代初期アメリカン・ロックを代表する3バンドと言われたThe AllmanBro. The Band, The GratefulDead の中で最もブルーズ色の濃いTheAllman は南部生まれのデュアンとグレッグのオールマン兄弟を中心に結成され69年にデビュー。ブルーズにジャズ、ソウル、カントリーなどのテイストがミックスされ、独自のアレンジを加えたブルーズはそれまでの白人ロッカーにはない斬新さと音の広がりがあった。ライヴ時の緩急自在のそのプレイは攻撃的でありながら飄々としており、デュアンのスライド・ギターの音色とグレッグの歌は官能的だがクールだ。しかし、何と言ってもテンションが上がった時に全員が作るグルーヴは空を自在に駆け巡るような高揚感に溢れている。そう言えば兄デュアンのあだ名は”Sky Dog”。しかし、”Sky Dog ”は71年にオートバイ事故で突然の死、またベースのベリー・オークリーも殆ど同じ場所で同じオートバイ事故で死亡。しかし、The AllmanBro. はメンバー・チエンジしながら現在も活動している。3年前ニューオリンズで プログレッシヴ・ブルーズの最高峰。兄デュアンはバンド結成以前はスタジオ・ミュージシャン、とくにスライド・ギターの名手として高く評価されて、アレサ・フランクリン、ウィルソン・ピケットなどの曲にも参加。また、エリック・クラプトンの名盤「いとしのレイラ」はデュアンなくしてはあれほどの名作に成り得なかった。

8.One Way Out (Sonny Boy Williamson)
♪女の家にいたら他の男が来てしまい2階にいたので外へ出れなくなってしまった。男が来ることがわかっていた女は最初から2階におれを上げたのか・・・オレの知らない男がいるなんて・・・ワナにかけやがったな。こんな風に誰かに自分の場所を取られてしまうんや♪死ぬ前日まで血へど吐きながらハープを吹いていたという一匹狼、サニーボーイ・ウィリアムスンの南国調ダンス・ブルーズ。ロバート・ジョンソンは他人の女房に手を出して毒殺されましたが、そのジョンソンとツアー(というより旅)していたハウリン・ウルフには「Back Door Man」という曲もある。直訳すれば「裏口男」、つまりダンナがいない時に裏口から入って奥さんと事を成す男のことです。この種の歌が多いということは現実にもそういう事がたくさんあるということで、何しろ大統領クリントンがフリントンの国ですから、あれ以来クリントンが何を真面目に言ってもボクは笑えてしまうのですが。ホワイトハウスの広い部屋で「アホ、すかたん、ボケ、カス・・」と、ヒラリーのヒステリーをじっと我慢のゼツリン(絶倫)トンの姿が目に浮かぷ。一方「不適切な関係」の相手、モニカ・ボインスキーいや、ちゃうでルインスキーはお金いっぱい貰ってハリウッドに引っ越しやて。しかし、一生「適切な関係」だけいうのも・・・・なぁ・・不適切な心が・・イカン!イカン!

9.Whipping Post (G.Allman)
♪なんであんなひどい女にホレたのか・・今頃、おれの仲間と飲み屋で盛り上がって誰かといいことするんやろ、みんなは愚か者だっていうけど、おまえを愛したオレが悪いんだ。時々感じるんだムチ打ち刑の柱に縛られているみたいだって・・そして死んだような気持ちになるんだ♪ Whipping Postとは「ムチ打ち刑の柱」だそうですが、別にSM的情交を歌っている訳ではありません。オールマン・ブラザーズのヴォ−カル、グレッグは金髪のロンゲで昔、映画俳優のシェールと結婚してた時もめちゃモテモテ男でグルーピーがいつも泊まりのホテルにたくさんいたそうです。そんな男が女にこんなひどい目に合ったブルーズ歌っても・・・でも、きっと女性ファンは「グレッグって可哀相・・」なんでしょうね。

10.Lost and Lookin' (J.W.Alexander/L.Jordan)
歌はめちゃウマ、ルックス抜群、頭も良くて、金もある、会社も経営、将来有望。60年代初期の活躍したサム・クックはまったく非の打ちどころのない男だった。詞はどこかに行ってしまった愛する女を探し、夜通し泣き続け、帰ってくることを願う重いブルーズ。最初は6、7分の力で軽く歌っているように聞こえるしかし、実はその歌声の奥に果てしない悲しみがこもっているオリジナルのサムの歌は決して歌い上げたり、シャウトしたり、盛り上げたりすることだけがソウルフルではないと教えているような見事な歌唱。ブルーズには自己の内面に向かって歌うことが多く、内省的な歌詞も多い。個人的な「嘆き」と言えばいいか。アフロ・アメリカンのブルーズのそういう個人的なことが一般的である表現が好きです。僕はライヴのMCで「みんな〜〜あ、ノッてるかぁ〜〜」とか「さぁ、みんなでブッ飛ばそうぜ!」のようなコールをしたことは一度もないのですが、あれはもう儀式なんでしょうか。もちろん、客がみんな同じ振り付けで踊るのも気持ちが悪いのですが・・北朝鮮のマス・ゲームを見る思いです。TB を聴く時はみんな勝手にリラックスして楽しんでください。酔いたい方は酔って、歌いたい方は一緒に歌い、踊りたい方はLet's dance 、腹が減ってる方はバクバク食べて、泣きたい人は泣き、笑いたい人は笑って、帰りたい人は帰って、チップを出したい人はどんどんステージに金を投げてください。

11.The Greatest Love (Lee Diamond/George Davis)
いまや超ビッグなバンドになってしまったネヴィル・ブラザーズのグラミ−歌手のアーロン・ネヴィル。かっては南部のサーキットを回るローカル・シンガーだった。これはその売れていない頃の彼の歌。こんなん見つけてくるのが上手いと言われるんですが、別にわざと知られてないマイナーな曲を選んでるわけではありません。♪自分の恋人にもうひとり彼がいると知り「君のもうひとりの恋人は君にすてきなドレスやきれいなものを買い、彼はダンスが出来て歌も歌え、気の利いたおしゃべりもでき、権力もあるプレイボ−イ。君と彼は腕をからませて歩いている。それがボクを傷つける。そうボクはいつも脇役。だけど君はボクの愛の大きさを知らない。愛は所有することやひとりじめすることではない、覚えておいて欲しい君はどこへでもいける。君は自由なんだよ」
♪よーし!今日はこのぐらいにしといたろか。まだまだ続くTB SONGS FOR TB LOVERS次回乞う御期待!
p.s. 時間があれば7/21西荻窪「Bin Spark」TEL:3395-9299 森園、八木、ホトケのアンプラグド・ライヴへもcome on!
OK!Ladies&Gents&Boys&Girls&yappies&hippies! Thank you for lovin' our TB. Trick Bag Tribe are Hotoke(vo) Mori(g) Koji(key) Tsuru (dr) Ohnishi(b) and you all.



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