永井"ホトケ"隆


「TRICK BAG TRIBE」vol.5


TBT(Trick Bag Tribe)Vol.5

 Trick Bag前回のJirokichiのライヴはのっけから「どこへ行くねん!?」ライヴとなり、1部の終わりがすでに2部の終盤ごとき様相でメンバーは汗ダクダク。ホトケが苦笑し「もう1部あります」とMCし休憩に入った。長引いたカゼがようやく直り1部からグングン飛ばす「宇宙人」に全員あわてて円盤に飛び乗り、地球を3周ほどして帰還したこの夜のライヴでした。やはりビートが命のバンドにとってドラマーとベーシストの調子の善し悪しは大気圏を出られるか、否かの鍵です。前回のTBTから始めたメンバーのプロフィール紹介。今回はHeavyBass & Heavy Drunk!Super Baaad ベースの大西真です。

大西真(BASS)1957年5月19日/愛媛県川之江市生まれ 
 大西真は四国の瀬戸内海の気候温暖な川之江に生まれた。稼業はBarber Shop。春の日ざしの中、シャンプーと石鹸の匂いが漂う理髪店にハサミの音がシヤカシャカ響く。無口で生真面目な父親と愛想のよい母親が働くそばをバットとグローブを持った坊主頭の大西少年が・・・「瀬戸内少年野球団」を思い浮かべていたら、大西は「オレ、小学生の時、ギターとドラムやっててな」とぶち壊してくれた。ベースは中学からだそうだ。昔はギターを弾く奴が多すぎて、ジャンケンで負けた奴がベースに回されるということも多々あった。星印ベースのブーツィ・コリンズだ、チョッパーの元祖ラリー・グラハムだとベースが注目されるようになったのは70年代に入ってからで、60年代はじめはバンドをやる青少年にとって花形は歌とギターだった。ベースはドラムと並んで縁の下の力持ちだ。ヴォーカルやギターがフロントでチャラチャラして、女の子のキャーという嬌声を浴びている時にベースとドラムはひたすらリズムをくり出している。(余談でが、日本の人気バンド、グレイにはドラマーがいない。ドラマーはいるが正式メンバーではなくサポートだそうだ。ドラムがいなくて何がロックバンドだ!チャーリー・ワッツが怒るでぇ)とにかくベースは目立たない、楽器が重い。ドラムはドカドカ発散できるがベースは「おしん」だ。「ああ野麦峠」だ。我慢がいる。アクションしにくい・・。だが、「オレは自分からベースを選んだ」と自主選択に胸を張った大西。当時、好きだったのは「キャロル」。矢沢永吉はベースか・・なるほど。大西もE・YAZAWAのタオル首にかけてたか?ビートルズのポール・マッカートニーも好きだったというから根っからベースなんだ。ところが前述したように小学生の時にはギターとドラムもやっている。歌もやっていたから、つまり、中学までにキーボード以外の楽器に全部触れている。中学では「クリーム」のカヴァー・バンドをべースで手伝い、高校ではロックをやりつつ、フォーク・バンドの手伝いでギターしかもリード・ギター担当(このフォーク・バンドには好きな女でも・・・と疑惑あり)。そして、17、8歳の頃白人ファンク・バンドのバキバキ「タワー・オブ・パワー」にどっぷり浸かり、ディープ・ソウルの女将エタ・ジエイムズの歌に禁断のブラック・ミュージック・フィールドへの筆おろしを済ませた。ここでブラック一筋かと思えば、予備校で上京し通った店でウエスト・コースト・ロックの「オーリアンズ」さらにジョン・ホールを聴き心惹かれている。翌年見事に早稲田大学へ。その頃から徐々にプロの世界へ入っていくのだが、この頃知り合った現在は名の知られている女性ジャズ・ピアニスト「K」嬢に「ブルース知らんヤツは音楽止めよ」と言ったそうである。この話を聞き鶴谷は「大西さんも吹くんや・・」。若気のいたりとは言え、ここに「吹く大西」という新しいキャラを私達は発見。

その後、ハードロック・シンガー(元ノイズ)の人見元基とバンドをやっている。80年代のはじめホトケと同じ「ウエストロード・ブルーズバンド」を始めたドラムの松本照夫が過去一度だけ、自己のバンドを持ったことがある。バンド名はジャンルにこだわらないということから「ジャンル」。その時なんと!松本照夫は大西をオーディションをしたという。しかしオーディション会場が下北沢のいまは近藤房之助の飲み屋「ストンプ」・・・大酒飲みのオーディションか?。大西はオーディションに見事合格。82年頃から下北の「ロフト」などで「ジャンル」のライヴをやりつつ、石黒ケイのサポート・バンドを松本と共に始めた。入道、内籐やすこ、妹尾隆一郎、そしてホトケともセッシヨンをし始めたのがこの頃だ。そして、松本照夫が夜の歓楽街に消えるように「ジャンル」は自然にフェイド・アウト86年、「ブレイク・ダウン」を脱退した近藤房之助のバンド「ONE ARM」に参加。87年Yeah Recordから「You can get the woman that you want」をリリース。「ONE ARM」はJirokichiを拠点に精力的に全国ツアーを敢行。約3年弱続いた「ONE ARM」解散後、元「バウンド」のVo.古田光郷の「The Boilers」に参加。その当時の音源は95年に発表されたアルバム「So What?」(Modern Music Market〕に収録されている。

大西の略歴で目立つのが外国ミュージシャンとのセッション、サポートだ。ざっと並べるとWARのLee Oscar〔harp)、マービン・ゲイ、ボビー・ウーマックのアルバムを支えたソウル界の重鎮James Gadson(Dr),シカゴのテクニシャン・ハービスト、Sugar Blue そして先頃来日中のファンク・ドラマーの大御所Bernard PurdieともJirokichiでミッドナイト・セッションを行った(この時の演奏はテープ有。素晴らしい!)。その他、Nappy Brown,Lil Queenyなど。また、92年から度々訪ねたニューオリンズでも、現在、在住の山岸潤史と共に異色のシンガー、ソング・ライターAJ.Loriaのバンドで,また山岸のソロ・アルバムにも参加したドラマーKerry Brownのバンドでも「NewOrleans Jazz&Heritage Festival」の舞台に立った。97年1月オムニバス「江戸屋百歌撰」(EDOYA Record〕のホトケの「Think」に参加。同年4月,ACOのアルバム「NUDE」に参加。また、同年Blues RamblerのライヴCD「Call the tune at JIROKICHI」に参加。Blues Ramblerは現在もライヴを継続中。98年4月新星堂「おうまがとき」レーベルから発売されたオムニバス・アルバム「Vintage Guitar File」には自作曲の「Carlos」を含む山岸潤史BluesTripperの演奏に参加している。

現在、彼はライヴに引っぱりクマ、いやダコだ。T・B以外にも参加しているのはハープの西村ヒロのグループ「HooDoo Booze」、妹尾隆一郎の「Seno-Tera」、そしてT・Bとはブラザー・バンドの「金子マリ&Hard Drivin’Blues」。そして、5年前から始めている自己のバンド「A」(マービン、橋本じゅん、湊雅史)も積極的に起動しており、「A」は本年4月にはテキサスにてレコーディング予定だ。その他にも単発のセッションもこなしEveryday Live Playerだ。

好きなベーシストは?との問いに「まあ、ジエイムズ・ジエマーソン、チヤック・レイニー、ジョージ・ポーターとか好きやけど、おれはベースで音楽を聞いてないから・・」と吹かれた。それに懲りず「日本のベーシストでは?」と聞くと、「川端民生、小堀正」。???!!☆☆☆@@@♪♪このふたりのことを説明するスペースはないので各自検索してください。大西も入れて3人の共通項目は「酔っぱらい」です。

さて、どうもベーシストは「渋く」見えるようだ。後ろで大黒柱としてバンドを支え、無口で、思慮深い、達観しているように見えるらしい。中には「渋く」ない、オレが、オレが・・の現フユージョン系ベーシスト/金子マリとも過去バンド経験ありの「N」(あまりの大音量、大音数にホトケがステージで”うるさい!”と怒鳴った)のようなのもいるが。さて、某日のリハ前の楽屋、目を閉じ何か想いに耽っているかのようにソファに身を沈める大西。「犬」と「月」がアホ話にワンワンやって狂喜しているのに腕組みをして、黙想を続ける大西。しばらくしてふと立ち上がり「飲も」。楽屋へ戻ってきた時、手にもつコップには日本酒が・・・。酒飲みが多いこの界隈でも演奏前に日本酒をグイグイいく奴は少ない。しかも、大西は酔っているのかそうでないのか・・よく分からない。寛容なのか何でもいいのか。大雑把なのか繊細なのか。考えてるのか何もないのか。疲れているのか元気なのか。満腹なのか空腹なのか。大人しいのか凶暴なのか・・そう、「熊」だ。それも北の原野をウロウロと歩き、川の鮭を手で取るかと思えば冬眠してしまう熊。あの愛らしいハチ蜜好きのWinnie The Pooではない。酒好きの熊。

昨今、大西の音楽的な前進についてはいろんな方面から良い話を聞く。現在の仕事の多さもそこから来るものだと思う。歌をサポートするだけでなくバンドを起動させ、緩急自在な即興の流れを作らなければならないTBのサウンドを支えるHeavy Duty Bass大西真。弾いて、飲んで、吹くか・・。

☆Trick Bag Live☆
 5/21(fri)船橋「月」
 6/5〔sat)BIG CAT 大阪アメリカ村 

☆OSAKA BLUES SPIRITS INFO☆
 ホトケがDJをしている日本唯一の本格的ブルーズ・ラジオ番組「大阪ブルーズ・スピリッツ」は現在”日本のブルーズ”を講座している。戦前の淡谷のり子から始り、現在やっと70年代に突入。ホトケがいた京都の先輩的バンド、彼曰く日本で唯一のパンク・バンド「村八分」の特集をやる。ゲストは過去、近藤房之助、木村充揮(憂歌団)、有山じゅんじ、チャカ(元サイズ)、チャボ(仲井戸麗市)、リクオ、鮎川誠、シーナなど豪華メンバーが登場。そして、次回はホトケの朋友、塩次伸二がきてブルーズ・ギターのひみつを語る。また、ニューオリンズ在住の山岸潤史と月1回の国際TEL情報「REALLY!?」もある。
(MBS OSAKA BLUES SPIRITS)

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